【ガラパゴスアメリカグンカンドリ】 ガラパゴス自然保護基金/Galapagos Conservation Fund Japan
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ガラパゴストピックス

                              - 2009,01,19 -


 
進化の方舟はいま:ガラパゴス環境報告/3 持続的漁業の模索続く


 <進化の方舟(はこぶね)はいま>


 ◆横行するナマコ密漁

 ガラパゴス諸島の環境に影響を及ぼす大きな要因が観光業以外にもある。漁業だ。そして意外な生物がそのカギを握っていた。ナマコ、である。

 ガラパゴス諸島最大の街プエルトアヨラ(サンタクルス島)。ペリカン湾に臨んで小さな魚市場がある。魚をさばくコンクリートの台と屋根だけの質素な市場だが、おこぼれを狙って集まるペリカンやアシカを見ようと観光客が押し寄せる「名所」になった。「商売はかんばしくない。ナマコが取れればもうかるけどな」。漁師のネルソン・イバラさん(33)が物憂げに言う。羽振りのいいころは、平均的なエクアドル人の数カ月分の収入を1日で稼いだという。ナマコを食べたことは?と尋ねると、「あんなものエクアドル人は食べないよ」と苦笑した。

 ガラパゴスでナマコ漁が始まったのは90年ごろ。中華食材や漢方薬としてナマコは他の魚の数倍の高値で取引された。ブームはまず南米大陸に広がり、そこで取り尽くした漁師が手つかずのガラパゴスに目を付けた。諸島海域は海洋資源保護区として商業漁業が規制されていたため、密漁が横行した。

 その結果、ガラパゴスのナマコは激減した。かつて浅瀬を歩くだけで取れたのが、水深20~30メートルまで潜らなければ見つからなくなった。「今では漁獲量は最盛期の5分の1以下」と、ガラパゴス国立公園局(PNG)海洋部門のハリー・レイエス部長は言う。ガラパゴスに生息するナマコ29種のうち、食用に適した1種が03年、希少な野生動植物の国際取引を規制する「ワシントン条約」の対象となった。

 レイエス部長が心配するのは環境への影響だ。ナマコは海底の有機物を砂と一緒にのみ込み、砂だけを排せつすることで海水を浄化し、海中の生態系のバランスを保つ役割もする。「ナマコが減ると、他の生物も一気に減った」。密漁者はイサベラ島などの海岸にナマコをゆでる加工場を作った。燃料は自生するマングローブ。伐採で、陸の環境も踏みにじられた。

 環境を守る政府の努力には妨害も多い。密漁者の加工場を摘発しようとしたPNG職員は銃撃された。95年には、商業漁業規制に反対する漁師らがPNG周辺の道路を占拠し、ガラパゴスの自然保護の象徴として飼育されているゾウガメ「ロンサム・ジョージ」を殺すと脅迫した。

 98年、ガラパゴス特別法のもとで漁師やPNG、関係省庁の大臣らが参加する組織が発足し、ナマコ漁は年60日間に限ると合意した。しかし、減ったナマコは容易には元に戻らず、違法操業も依然、存在する。

 「数年間は完全禁漁にしたいが、生活できない漁師が出てくる。でも、自然を失って最も打撃を受けるのは我々ガラパゴス人だ。それを忘れちゃいけない」とレイエス部長。「持続的な漁業」への模索が続く。  【奥野敦史】


(C) 毎日新聞

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