進化論の創始者、チャールズ・ダーウィン(1809~1882年)が着想のヒントを得たガラパゴス諸島(エクアドル)。約500万年前の誕生以来一度も大陸と陸続きになることはなく、孤立した環境は生物に独自の進化をもたらし、特異な自然をはぐくんだ。その環境が今、急速に変ぼうしている。旧約聖書で滅亡を防ぐために動物たちが乗った「方舟(はこぶね)」にたとえられる島々の現状を報告する。【奥野敦史、写真・平田明浩】
諸島最大の街、プエルトアヨラ市があるサンタクルス島。島南側の市中心部と、標高864メートルのクロッカー山を挟んで反対側に、市のごみ埋め立て場がある。
幅50メートル、奥行き200メートルほど。刺激臭が鼻をつき、ごみで埋め立てられた地面にはガラス片も混じっている。一角に幅5メートル、長さ100メートル以上の溝があった。中には空き缶、空きびん、プラスチック、大量のポリ袋……。住民にもあまり知られていない光景だ。
ごみ収集車がやってきて、上からごみを落とす。ガソリンがまかれ、火が付けられた。もうもうと舞う煙と炎の間を、固有種の鳥、ダーウィンフィンチが縫うように飛ぶ。生ごみを食べに来たらしい。溝沿いに並ぶパロサントの木は「聖なる木」という意味だ。煙で真っ黒にいぶされ、白い樹皮もレモンのような強い香りももう分からない。
「サンタクルス島にはエクアドル随一のリサイクルシステムがある」。プエルトアヨラ市のビルヒリオ・サントス・セデーニョ副市長は誇らしげに言った。市民の家には生ごみ、リサイクルごみ、その他のごみと分別するためのごみ箱が配られ、回収されたガラス、プラスチック、紙くずは、市郊外の施設で道路の舗装材や段ボールに再生される。トヨタ自動車や世界自然保護基金の支援で作られたシステムだ。
しかし市内には下水道がなく、汚水は海に垂れ流しだ。野焼き状態のごみ埋め立て場についても副市長は「もちろん改善したい」と力説する。「だから観光が大事。観光が一番お金が入る。世界中の人にどんどん来てほしい。私たちは『来ないで』とは絶対言わない」
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