【ガラパゴスアメリカグンカンドリ】 ガラパゴス自然保護基金/Galapagos Conservation Fund Japan
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ガラパゴストピックス

                              - 2009,01,05 -


 
進化の方舟はいま:ガラパゴス環境報告/1 増え続けるごみ


 <進化の方舟(はこぶね)はいま>


 ◆観光産業に依存する経済、野生生物の存在脅かす

 進化論の創始者、チャールズ・ダーウィン(1809~1882年)が着想のヒントを得たガラパゴス諸島(エクアドル)。約500万年前の誕生以来一度も大陸と陸続きになることはなく、孤立した環境は生物に独自の進化をもたらし、特異な自然をはぐくんだ。その環境が今、急速に変ぼうしている。旧約聖書で滅亡を防ぐために動物たちが乗った「方舟(はこぶね)」にたとえられる島々の現状を報告する。【奥野敦史、写真・平田明浩】

 諸島最大の街、プエルトアヨラ市があるサンタクルス島。島南側の市中心部と、標高864メートルのクロッカー山を挟んで反対側に、市のごみ埋め立て場がある。

 幅50メートル、奥行き200メートルほど。刺激臭が鼻をつき、ごみで埋め立てられた地面にはガラス片も混じっている。一角に幅5メートル、長さ100メートル以上の溝があった。中には空き缶、空きびん、プラスチック、大量のポリ袋……。住民にもあまり知られていない光景だ。

 ごみ収集車がやってきて、上からごみを落とす。ガソリンがまかれ、火が付けられた。もうもうと舞う煙と炎の間を、固有種の鳥、ダーウィンフィンチが縫うように飛ぶ。生ごみを食べに来たらしい。溝沿いに並ぶパロサントの木は「聖なる木」という意味だ。煙で真っ黒にいぶされ、白い樹皮もレモンのような強い香りももう分からない。

 「サンタクルス島にはエクアドル随一のリサイクルシステムがある」。プエルトアヨラ市のビルヒリオ・サントス・セデーニョ副市長は誇らしげに言った。市民の家には生ごみ、リサイクルごみ、その他のごみと分別するためのごみ箱が配られ、回収されたガラス、プラスチック、紙くずは、市郊外の施設で道路の舗装材や段ボールに再生される。トヨタ自動車や世界自然保護基金の支援で作られたシステムだ。

 しかし市内には下水道がなく、汚水は海に垂れ流しだ。野焼き状態のごみ埋め立て場についても副市長は「もちろん改善したい」と力説する。「だから観光が大事。観光が一番お金が入る。世界中の人にどんどん来てほしい。私たちは『来ないで』とは絶対言わない」


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 サンタクルス島の東に浮かぶ無人島、サウスプラサ島。0.13平方キロ、真っ平らな小さな島は日帰りネーチャーツアーの人気スポットだ。十数人のグループが5、6組、ガイドに導かれて上陸していた。イグアナやアシカ、珍しい海鳥たちが間近に見られる。あちこちで歓声が上がる。

 地元の学校でエコツーリズムを教えているガイドのダニエル・ベルガラさん(37)は言う。「ガラパゴスは農業も牧畜も漁業も壊滅し、観光しか頼れない。毎年高校を卒業する500人の子どもたちの働き口が観光以外どこにある?」

 世界自然遺産第1号のガラパゴスは07年、観光客による環境悪化を理由に「危機遺産」にも登録された。そのことに触れると、ベルガラさんの口調が変わった。「我々は固有種の木を切ってないし、イグアナも殺していない。世界に誇れるエコツーリズムの実践地だ。負のイメージを植え付けるな!」

 実際、ガラパゴスへの観光客は急増してきた。79年には年間1万2000人だったのが04年には年間10万人を突破。08年は約16万人に達している。


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 「50年前、このあたりの人口は160人、家は25戸だった」。プエルトアヨラで生まれ育ったオスワルド・チャッピさん(66)は振り返る。40年以上、国立公園局のレンジャーやガイドを務めてきた。72年、ピンタ島で唯一のガラパゴスゾウガメ「ロンサム(孤独な)ジョージ」が発見された時、ジョージを運んだ一人だ。

 「今、市の人口は1万6000人ぐらい。80年ごろから急速に人が増え、ごみが増えて生き物が減った。繁殖期には幼鳥で埋め尽くされたエスパニョラ島やノースセイモア島も、今では巣が点々とあるだけだ。観光客は巣を壊してない。だけど人が増えるだけで野生生物は減るんだ」とチャッピさんはため息をつく。「孫には本土で観光以外の仕事ができるよう勉強しろと言っている。このままじゃ自然は壊れる。この自然なしにガイドの仕事は成り立たないさ。自然が財産なんだよ」


 <ことば>

 
◇ガラパゴス諸島

 諸島の総面積は約7900平方キロ。約500万年前、海底から噴き出したマグマによって最初の島が形成された。1832年にエクアドルが領有を宣言。ガラパゴスという名はスペイン語で「リクガメの島」という意味で、正式名称は「コロン諸島」。78年に陸上部分が世界自然遺産に登録され、01年に周辺の海洋保護区も追加された。

(C) 毎日新聞

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