ガラパゴスで増殖活動を続けるチャールズ・ダーウィン研究所では93年以降、近縁種とのペアリングを試してきたが、孤高を保つジョージに皆あきらめ気味。だが、15年たった今夏になぜか、お嫁さんが計16個の卵を産み、孵卵器で温められてきた。
卵は早ければ11月上旬に孵化する予定だった。しかし、うち13個は産卵時よりも軽くなったり、カビが生え穴が開いたりして、無精卵だったことがわかった。カメの生態に詳しい自然環境研究センター研究主幹の千石正一さん(59)によると、
〈1〉交尾に似ているが、受精はしない行動で産卵が誘発された
〈2〉繁殖行動を長い間とっていないために精子そのものに問題がある可能性がある
――という。
残る3個は大きさや重さに今のところ変化がない。ガラパゴス国立公園局は「卵がかえるとすれば年末年始ごろ」としている。上野動物園(東京・台東区)でリクガメの飼育を担当する野口利夫さん(54)は「1年だけでは繁殖能力の有無は判断できない。交尾に興味を示した以上、来年以降もチャンスがあるのでは」と期待する。
ただ、子どもが誕生したとしても、純粋なピンタゾウガメではない。生まれた子どもの交配を繰り返しても、限りなく近い種になるには数世紀以上かかる。千石さんは「近縁種との交配は、やむを得ない最終手段。なぜこういう状況になるまで種の保護活動ができなかったのか考えてほしい」と指摘している。
|