世界遺産の登録が始まって今年で30周年になるのを記念したシンポジウムが27日、都内で開かれた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の松浦晃一郎事務局長が講演で「世界遺産の地元は野放図に観光客を増やすだけではいけない」と述べ、観光振興と遺産保護の両立を訴えた。
松浦氏は、1978年に世界自然遺産の第1号として登録されたガラパゴス諸島(エクアドル)が昨年、観光客の増加による環境破壊のため「危機リスト」に掲載された例などを挙げ、「観光は世界遺産にとって脅威でもある」と指摘。その上で「遺産を守るためには(立ち入り制限など)一定の枠をはめなければならないこともある」と、あらためて保護の在り方を見直すよう求めた。
有識者のパネルディスカッションでは「観光客が落とすお金を遺産の保護に回す仕組みが必要だ」「住民が地元の遺産の価値を知って誇りを持てるよう、学校で教えることも大切」などの意見が出た。
シンポジウムは都内の特定非営利活動法人の主催で、市民や行政関係者など約500人が参加した。
|