南米エクアドルのガラパゴス諸島(Galapagos)に生息するガラパゴスゾウガメの「ロンサム・ジョージ(一人ぼっちのジョージ)」。ピンタ島(Pinta)固有の亜種の最後の1頭と言われているが、このたび近縁種が見つかった。4月30日に発表された国際研究チームの報告書により明らかになった。
「ロンサム・ジョージ」は1971年、約65年ぶりにガラパゴスゾウガメの亜種ピンタゾウガメの個体として発見された。ピンタゾウガメの最後の1頭とされ、サンタクルス島(Santa
Cruz)のチャールズ・ダーウィン(Charles Darwin)研究所で保護飼育されるようになってから他の亜種との繁殖も試みられてきたが、今のところ成功していない。ロンサム・ジョージの体重は88キロ、胴回りの大きさは直径にして約1メートル。発見以来、長年にわたり、ギネスブック(Guinness
Book)で「最も珍しい生物」に認定されてきた。
そのしわだらけの姿は、人類の活動がさまざまな動物を絶滅の危機に追いやっている現実の象徴とされてきた。
ダーウィンが進化論を展開する上で重要な役割を担ったガラパゴスゾウガメは、全14亜種のうち3種がすでに絶滅している。人間による乱獲や、1950年代に人間により島に持ち込まれたヤギとの食物獲得競争で敗北したことが原因とされる。ロンサム・ジョージが死ぬと、ガラパゴスゾウガメの現存亜種は10種に減ってしまうことになる。
そうした懸念が高まるなか、エール大学(Yale University)を中心とする国際研究チームはこのたび、ガラパゴス諸島のイザベラ島(Isabela)で、ついにピンタゾウガメの近縁種を発見した。遺伝子の半分がジョージと同じで、「両島に固有のガラパゴスゾウガメの交配第1世代であるのは明らか」だという。
研究チームは今後、20人態勢で約2か月をかけて徹底的に調査を重ね、イザベラ島に住む約2000頭のガラパゴスゾウガメの中から遺伝子的に純粋なピンタゾウガメを探しだし、繁殖プログラムを開始したいとしている。
エール大学の生物学者ジェフリー・パウエル(Jeffrey
Powell)氏は、「ロンサム・ジョージの物語を、苦難や絶滅の象徴から、動物保護活動の成功物語に変えることができるかもしれない」と期待を込めて語った。
近縁種発見の報告書は、「Current Biology」誌5月1日号に掲載された。
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