沖縄本島では、今年7月下旬から水温30度前後の日が続き、一部でサンゴの危機(きき)を示す白化(はっか)現象が始まっていた。 その後、接近した台風13号のおかげで、とりあえず一息ついている。
白化は水温の上昇などにより、サンゴの体内に共生する褐虫藻(かっちゅうそう)が抜け出すことによって起こる。その状態が続けば、サンゴは白くなりやがて死ぬ。台風の襲来(しゅうらい)はサンゴを破壊(はかい)することもあるが、海水をかき混ぜ水温を下げる効果がある。
97年8月8日、サンゴが白化しているという最初の情報が、米国フロリダとカリフォルニアから、サンゴ礁(しょう)研究者らにメールで伝えられた。
その後、パナマやコロンビア、ガラパゴス諸島へと白化が広がり、98年に入るとオーストラリアのグレートバリアリーフ、インド洋、東南アジアへ。
同年7月には、沖縄本島のサンゴ礁も白化し始めた。調査した琉球(りゅうきゅう)大学瀬(せ)底(そこ)実験所の中野義勝さん(45)は「潜ってみると、名護(なご)湾は色も音もない死の世界だった。背筋(せすじ)がぞっとした」と振り返る。
高水温の主な原因はエルニーニョであり、地球温暖(おんだん)化がこれを助長(じょちょう)したとみられている。沖縄での白化は、サンゴに回復の兆(きざ)しが見え始めた01年や03年にもあった。頻度(ひんど)が増し、毎年のようになっている。
サンゴは水温変化には敏感だ。炭鉱(たんこう)でガス発生を知らせるために飼われたカナリアに例えて、地球環境の悪化を知らせる「海のカナリア」と呼ばれるゆえんである。
|