ケープタウン


 ◆関連情報は、藤原幸一著
 「ペンギンの歩く街」(ポプラ社)


アフリカからの報告
黒いペンギン
  〜油まみれで救助されるペンギンたち〜

南アフリカ沖は世界有数のタンカーの航路で
座礁事故が多発している(写真は83年)

油で弱って逃げられず、船のスクリューでけがをした
1998年5月25日、冬に入りかけたアフリカの海岸で、油まみれのペンギン520羽が保護された。
南アフリカ第二の都市ケープタウンでの出来事で、原因は港にある石油パイプラインの破損だった。
今年はその後も沖を航行する船からの油流出が続き、7月に2回、9月に1回と、ペンギンも含め、多くの海鳥が油まみれとなった。


アフリカ大陸南沿岸にはアフリカ固有のペンギン、ケープペンギンが暮している。
大陸沿岸では森に巣を造り、日帰りで近くの海へ漁に出る。
このケープペンギンも近年、絶滅が心配され始めた。今世紀初めに比べると、棲息数は3l以下にまで減ってきているという。
ケープタウン北西に位置するダーセン島は、ケープペンギンの巨大な繁殖地となっている。
島にはアフリカのペンギン全体の半数ほどが分布している。
今世紀初めには、約150万羽ものペンギンがこの島に棲息していた。その後激減し、80年代には6万羽ほどになってしまった。

海岸を散歩中の住民に保護されて、
段ボール箱で運ばれてくることも多い


SANCCOBの本部
油にまみれた鳥たちを保護してきれいにし、健康になるまで飼育して、最後は自然に戻す試みが、「南アフリカ沿岸鳥保護財団 (SANCCOB)」というボランティア団体により行われている。
南アフリカ沖の海は世界有数の航路だ。1968年には15、600隻もの大型船が喜望峰沖を通過した。
同年、石油タンカー「エッソ・エッセン」が喜望峰沖で座礁し、数千dもの原油が海に流れ出し、数えきれないほどのペンギンやカツオドリが犠牲となった。
この時たくさんのボランティア市民が鳥の保護にかけつけたことがきっかけとなって、ほぼ自然発生的にSANCCOBが設立され、現在にいたっている。
その後も油流出事故は頻発している。
特に94年には、約1万羽ものペンギンが保護されるという事態が起きている。
SANCCOB始まって以来の大惨事となった。中国の貨物船「アポロ・シー」はダーセン島の西南西14マイル沖で座礁し、2、400dの燃料油が流出したのである。

油で真っ黒になり、抵抗もせずにぐったりとしている

数がまとまったところで沖に出る。
漁は1日置きだ


SANCCOBでスタッフに囲まれ洗浄されるペンギン

漁に出ない日は、1日を砂浜で過ごす

とりあえず昼寝

油に巻き込まれずに無事に漁から戻ってきたペンギンたち

日が昇りかけるころ、
森の巣から起き出して砂浜に向かう


漁の間はつがいが交代でひなの面倒を見る


今年の九月下旬にSANCCOBでお会いしたメリーブ所長は、本業は獣医だが、そのかたわらペンギン保護に熱意をかたむけている。
「94年の事故はすさまじかった。
世界中からボランティアが駆けつけてくれたんだけどね。
まったく残念なんだが、半数を超えるペンギンを死なせてしまったんだ。
たとえ体の油は洗えても、ペンギンの飲み込んでしまった油が体内の赤血球を破壊し、体の抵抗力をうばってしまった。
あの時を想い出すと今でも辛いよ」
南アフリカでは、毎年最低でも1、000羽のペンギンが救助されている。
船の事故がなくても、石油タンカーによる違法な油の海洋投棄が日常茶飯事のように起きている。
夜陰に紛れて、タンクを海水で洗うのだ。
石油文明の恩恵のもとに人口を増やし続け、同時に、地球環境を破壊し続ける人間という生き物。
ここ南アフリカでも地球の仲間であるはずのペンギンが、絶滅の瀬戸際まで追い詰められている。

仕事が終わればそれぞれの巣に戻る

必ず朝には、巣の糞で汚れた体を洗う。
出勤前のシャワーといったところか

藤原幸一

早朝、ある程度の数がまとまるまで浜で仲間を待つ



この内容に関する記事、及び写真の掲載等をご希望の方は
下記へお問い合わせください。

Mail : info@natures-planet.com
Tel : 03-5485-1551



本サイトに掲載されている画像、文章等、
全ての内容の無断転載、引用を禁止します。


Copyright(c) FUJIWARA Koichi All Rights Reserved