積極的に人間とコンタクトしようとする野生のイルカを「フレンドリー・ドルフィン」と呼ぶ。
ブリスベーンからフェリーで約1時間の沖合いに浮かぶモートン島には、そんな8頭のイルカの群れが毎晩エサを求めてやってくる。
島ではこのイルカたちと触れ合うための餌付けプログラムは数年前から実施。
その際、人間とイルカとの間を取り持つのがドルフィン・ケアラーだ。
その中にドルフィン・トレーナーを目指して働く日本人女性、林梨絵さんの姿があった。


夢のドルフィン・トレーナー


午後5時30分。
すっかり日の沈んだビーチの浅瀬には、すでに4頭のイルカがやってきていた。
「キュー、キュー」という甲高い音を発して、4頭はじゃれあいながら浅瀬を自由に泳ぎ回っている。
「ここにくるイルカたちは、まったくの野生イルカです。
サメにおそわれて体に傷を付けてやってくることもあります。
それはとても衝撃的なことでした。」

イルカの餌付けプログラムを組むモートン島、「タンガルーマ・ワイルド・ドルフィン・リゾート」で、今年の5月10日から餌付け指導ボランティアとして働いている林梨絵さん。
さわやかな笑顔が印象的な20歳の女性だ。

島にやってくるのは、モートン湾を行動範囲とするバンドウイルカ。
約400頭ものイルカが島の周りを回遊している。
イルカの中でも、とりわけバンドウイルカは好奇心が強い種だという。

10年ほど前から、一部のイルカの群れが、船着場のライトの光に集まる小魚を食べにやってきていた。
あるとき、そのうちの1頭、のちにビューティーと名付けられたメスのイルカがスタッフの投げ入れた魚を食べた。
この出来事がきっかけとなって、彼女の仲間のイルカたちも餌付けに集まってくるようになった。

餌付けに参加する人々とイルカとの間を取り持つのが林さんの仕事だ。
2人または3人の組になった参加者の間に立って、正しい餌付けの方法を指導する。

オルカと少年の交流を描いた映画『フリー・ウィリー』を中学1年生のときに観て以来、イルカをはじめとした鯨類の虜に。
高校を卒業したあと、大阪コミュニケーションアート専門学校「ドルフィン・トレーナー」コースに入学した。
モートン島へは1999年、2年次の実習で初めて訪れた。

「ホエール・ウォッチングに行ったり、イルカの餌付けを見たり。
自然の中で自由に泳ぐ姿がみられるこの場所が1度で気に入りました」

学校はこの春卒業した。
約40人いた同級生の中でも、イルカに携わる仕事に就けたのはわずか5人程度と言う。
そんな中でふたたびモートン島を訪れ、イルカの世話をするチャンスを得た。


朝8時20分から桟橋(さんばし)付近にやってくる
ペリカン、ウミウへの餌付け。
午後1時から5時までは
ドルフィン・エディケーションセンターで、
餌付け参加者の受け付け業務を担当している。
モートン島は1950年代には
年間600頭もの捕獲量を誇る
ザトウクジラの捕鯨基地だった。
現在はホエール・ウォッチングの
ポイントとして知られる

「初日から『餌付けの指導をしてね』なんて言われちゃって」

最初は英語が聞き取れないために悔しい思いもしたという彼女だが、持ち前の明るさで、いまやリゾート1の人気者だ。



野性の力に魅了され


この日餌付けに姿をあらわしたのは7頭のイルカたち。
林さんは5歳のメスイルカ、シャドウの餌付けのサポートをした。

「シャドウはとても小さくてかわいいでしょう。この隣にいるのがお姉さんイルカのティンカーベルです。
彼女の背びれの形はここに来るイルカの中でも1番キレイなんですよ」

イルカはよく見るとそれぞれ体の大きさ、色、そして背ビレの形が違う。
それが個体の識別に役立っている。

「えさを持った手をゆっくり水の中に沈めて。
イルカがえさをくわえたら静かに手を離してください」

野生のイルカに間近に触れるチャンスには誰もが感動し、興奮する。
しかし、野生動物に餌を与えることは常に危険を伴う行為だ。

「絶対にイルカに触ったり、叩いたりしてはいけません。
イルカが興奮して指に噛みついてくることもあるんです」

静かに近寄ってきて「パクッ」と手に持ったエサを食べるイルカ。
すべてはイルカとの信頼関係が成り立ってこそできることである。

「ティンカーベルは、妊娠している人や、病気の人に敏感に反応します。
くちばしで人の体を問診するように、ゆっくりとなでまわすんです」

イルカとの交流がおよぼすヒーリング効果にも関心があると言う林さん。
例えば自閉症の子供がイルカに触れると心を開いてしまうことなど。
タンガルーマには毎晩定期的に
8頭のイルカがやってくる。
この晩はフレディの姿が見えなかった。
どこかへ遊びに行ってしまったのだろうか?


「イルカたちは野生の中でたくましく、
しっかりと生きている。
そのことを実感することができたことが
1番の収穫です」



イルカは情報を得るために「エコロケーション」という知覚システムを用いる。
周囲の障害物から跳ね返ってくるエコーから得られる情報をもとに、イルカはそこにあるものを認識する。
そのイルカが人間を知ろうとする行為が人間にとっては安らぎを与えるようだ。

「そんな不思議な力を持つ、イルカはやっぱり素敵な生き物です」

大好きなイルカ、すばらしい仲間に恵まれた現在だが、いったん日本へ帰国する予定。
ドルフィン・トレーナーとして彼女のキャリアは今、始まったばかりだ。




☆★☆★☆林梨絵さん モートン島日記☆★☆★☆


5月10日、待ちにまったモートン島での実習がはじまりました。
去年の11月に初めてモートン島に行ったときに、このすばらしい島に人目ぼれしました。その日からモートン島で実習したいと思いつづけ、半年後にやっと夢がかないました。
初めは英語も全くわからない状態で、1週間は日本に帰りたいと思いながらすごしました。でも、フレンドリーなスタッフの友達も徐々に増え2週間目からは初めの1週間がうそだったかのように毎日毎日楽しくすごしました。
私の1日の仕事の流れは、朝はペリカンと海鵜の餌やり、昼間はマリンエデュケーションセンターで、イルカの餌付けを希望するお客さんの予約の受け付け、そして、夜はイルカの餌付けのスタッフというものでした。モートン島にはだいたい決まったイルカが7頭きていました。(今は赤ちゃんが産まれたので8頭です)その中でも私はShadowという女の子のイルカが大好きでほとんどまいにち彼女に魚をあげていました。2ヶ月半の間、毎日Shadowに会うのが本当に楽しみでした。
だから最後の餌付けの時は本当に悲しくて涙がとまりませんでした(;_;)

モートン島ではたくさんの出会いがありました。いろんなお客さんと友達になり、日本に帰って来た今もメールのやりとりをしています。人と出会う事が本当にすばらしいことだと思いました。
日本では味わったことの無い充実感を毎日実感してすごしたモートン島での生活は私にとって生涯の宝物になったと思います。


モートン島最高!!!!モートン島万歳!!!!(^0^)



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