「パッパパ―、パパ―」と、
けたたましいトランペット音が、森の静寂を切り裂いた。
ニュージーランドと南極大陸の間に位置する、ここはオークランド諸島の森。


繁殖期を迎えたキガシラペンギンが、激しく鳴き合っていた。
やかましい怒鳴り声というよりは、もっと音楽的で気品が漂う響きだ。
ニュージーランドの原住民であるマオリ族は、このペンギンのことを「ホイホ」と呼ぶ。
やはり、鳴き声から名づけられたようだ。


キガシラペンギンは、海岸近くの森林をすみかとしている。
氷とはまったく無縁の、本来は森の住人なのだ。
このペンギンは人間以上にプライバシーを大切にしている。
森の中で、互いに見える場所にはけっして巣を持とうとしないのだ。
もし巣が近すぎた場合、繁殖はほとんど成功することはないという。

キガシラペンギンの住まいは、森林にある。
森の中を巣まで、1キロも歩いたりする
森は伐採されてしまった。
丘の上にわずかに残された木立をめざして、
ペンギンたちは上っていく
キガシラペンギンは、絶滅危惧種に指定されている。
実のところ、すべてのペンギンの中で最も数が少なく、今なお減少傾向にある。
ほとんどのペンギンの森は、人間によって伐採され、牧場と化してしまった。
さらに、人間によって島に持ち込まれた犬、猫、イタチ、テンやネズミは、ペンギンの卵やヒナを襲った。


ニュージーランドで470万年前のキガシラペンギンの化石が発見されている。
このペンギンは何百万年もの長い間、脅威となりうる天敵を持たず、平和に森で暮らしてきたのだ。


ずっとずっと、ペンギンたちに平和が続いていた。
ほんの200年ほど前に、人間が帆船で島にやってくるまでは――。

藤原幸一
同じ島に暮らし、翼長3メートルにもなる
世界最大の海鳥、シロアホウドリ。
この鳥はペンギンと同じ祖先から進化した
森の中で、キガシラペンギンは
縄張り意識が強く、
互いに見える所には巣を作らない



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