南極海には30億tも生息する、オキアミ

南極大陸の2倍もの大きさに広がってしまったオゾンホール。


その真下の南極にも生き物たちの世界がある。
タスマニアにあるオーストラリア南極研究所に向かった。





オキアミは海老によく似た甲殻類の海洋生物で、体長6cm、重さ6gほどにまで成長し、南極海にはたくさんいる。



「まだまだオキアミは生態的にも分からないことが多いのだけれど、最近の調査から・・・・・・・・」

と研究員は、少し暗い表情になった。
オキアミの死はつまり、すべてのクジラやペンギン、アザラシの死を意味している。


オゾンホールがオキアミに悪影響を及ぼしているのではと危惧している。
南極海の食物連鎖南極海の食物連鎖
南極海の食物連鎖南極海の食物連鎖
小さなオキアミは実のところ、南極海の生態系で最も重要な生物なんだ。クジラだけでなくペンギン、アザラシ、イカや魚はみんな、オキアミが一番大事な食べ物」

オゾン層を破壊するフロンはもともと自然界には存在しなかった。
人類によって生み出されたフロンは、エアコンや冷蔵庫の冷却剤や半導体などの精密機器洗浄剤、スプレーの圧力剤などに使用されている。



70年頃から、フロンによってオゾン層が破壊され始め、そして生物に有害な紫外線がより多く地表に届くことが指摘された。



80年代初期には南極で初めてオゾンホールが日本人の研究者によって発見された。
85年には「オゾン層の保護のためのウィーン条約」が採択され、さらに87年「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が採択された。



なお。議定書は当初の予想以上にオゾン層破壊が進行していることが観測されたことなどを背景にして3度にわたって見直され、規制強化が行われた。

だが、問題が解決されたわけではない。


ウエッデルアザラシ。南極全体で推定50万頭くらい生息している。南極には他に4種類のアザラシがいて年間2億tものオキアミをたいらげているといわれている。

エンペラーペンギン。餌のオキアミやイカ、魚がいる海へ向かっている。捕食のために水深200mも潜水し、20分間近く潜れる。

キョクアジサシは食料を求め、北極と南極の間を毎年往復する。4000kmもの旅は、渡りをする生き物ではまさしく最長距離。


エアコンや冷蔵庫に使われていたフロンが大気中に排出され成層圏にたどり着き、オゾン層を破壊するには10年の歳月がかかるといわれている。

つまり、これから本格的なオゾン層破壊が始まることを意味している。
もしそうなら、2000年初期には皮膚がんや白内障がこれまで以上に多発すると予想されている。

もっとも、フロンの全廃が採択される前に生産された冷蔵庫やエアコンなどにはフロンが使用されているために、それらの製品の処理はいまだに大きな問題である。

先進国のほとんどが廃棄時にフロン回収を義務づけたり、厳しい規則や罰則があるのに反して、世界のフロンの15%を消費するといわれる日本では、きびしい罰則をともなった強制的な規制がほとんどないのははずかしい限り、と言わざるをえない。


人類が作り上げた文明は加速度的に進歩し、それにともなって化石エネルギーを大量消費してきた。
そして人類が自然に与える影響も、今では地球全体までにおよぶ問題になってきている。
これは人類だけの問題のみならず、すべての生物の運命を左右する問題であることを自覚すべきであろう。

藤原幸一

オゾンホールの下で
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