アメリー棚氷

〜オゾンホールの中で生きる〜
アメリー1
夏はペンギンにとって衣替えの季節。
エンペラーペンギンの羽毛は、
真新しい高密度のものに生まれ変わる


気温マイナス60度、南極の冬。地球上で最も過酷な環境。
冬に繁殖するエンペラーペンギンは、驚くべき生き物である。
頑丈な体がそれを可能にしているのだろう。
エンペラーペンギンはすべてのペンギンの中で最も大きく、分厚い皮下脂肪をもち、羽毛もぎっしりと生えている。


1月の午前2時。
「ゴゴー、ドド―」という地響きのような音で、僕は目を覚ました。
乗っている砕氷船は、アメリー棚氷の巨大な氷壁の前で止まっていた。
ブリザードだ。
内陸で冷やされて重くなった空気は突如、氷の斜面を猛烈な吹雪となって下り、海にやってくる。
すぐにやむと思われた吹雪は結局、6時間以上も続き、危険を感じた船長は船を沖へと退避させた。


アメリー2
ブリザードが吹き荒れていた。
アメリー棚氷で冷やされ重くなった空気が、
氷の斜面を猛スピードで下り、
海に流れ出した
アメリー3
腹ばいで脚を使って滑っていくことを
「トボガン滑り」という。
この得意技で、エンペラーペンギンは
直立で歩くよりも数倍速く進める



アメリー4
寝ていた、体重500キロもありそうな
ウェッデルアザラシを起こしてしまった。
まだ寝ぼけているのかな?
警戒心をまったく見せない

海から内陸に20キロほど入った氷上で、エンペラーペンギンの一団と出会った。
60頭ほどの群れはみんな「トボガン滑り」(腹ばいの橇滑り)で、僕のほうに向かってきた。
まったく怖がる様子も見せず、僕の横をさっと通り過ぎていく。
彼らは海からさらに200キロも内陸にある繁殖地へ向かう途中らしい。
すると突然、吹雪がやってきた。
僕とペンギンたちはあっという間に、雪だるまになってしまった。


エンペラーペンギンは水深400メートルもの深海で漁をする。
暗黒の深海で、いったいどうやって獲物を見つけているのだろう?
いったい何を目印にして、遠い内陸の繁殖地へたどり着くのだろう?
「太陽を見ながら行くのさ」と言う人もいる。
ある人は「雲の輝きを見比べているのさ」と。
エンペラーペンギンの謎は尽きない。



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