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ガラパゴストピックス

 
                              - 2009,12,25 -



 ◆種の起源:発刊150年 進化を守るための「今」京都賞受賞のグラント夫妻に聞く

今年は「ダーウィン・イヤー」と呼ばれた。英国の自然科学者、チャールズ・ダーウィンの生誕200年、著作「種の起源」の発刊から150年の節目だったからだ。2010年は、国連の「国際生物多様性年」。進化とは何か。なぜ生物多様性を守るのか。ダーウィンの後継者と呼ばれる進化生物学者で、今年の京都賞(基礎科学部門)を夫妻で受賞したピーター・グラント(73)、ローズマリー・グラント(73)の両博士に聞いた。【奥野敦史】

ダーウィンが、進化論のヒントを得た地とされるエクアドル・ガラパゴス諸島。二人は73年から、同諸島の無人島でホオジロの仲間の小さな鳥、ダーウィンフィンチの研究を続けている。

     ◇

--二人にとってガラパゴスはどんな場所ですか。観光などで多くの人が訪れ、環境が激変しています。

ピーター(P) ガラパゴスは私たちの研究にとって「金鉱」です。研究対象の大ダフネ島やヘノベサ島は無人島で、研究への人為的影響はありません。

ローズマリー(R) 他島でも観光客は専用船に乗り、島では歩道以外を歩けないなどの制限があります。観光産業は政府の財政を支え、環境保全への意識を高める点でも重要です。もし観光産業がなければ違う形で搾取され、より環境が破壊されたかもしれません。一方、現在の大きな問題は違法漁業です。海の資源を根こそぎ持っていきます。

P もう一つの大きな危機は外来生物です。島外からの往来が増え、本来諸島にいない植物や昆虫の移入が増えています。フィロネス・ダウンシというハエは、約40年前に移入したのですが、幼虫がフィンチのひなに寄生して殺すことが最近分かりました。鳥マラリアの移入も危惧(きぐ)されています。

     ◇

蓄積した精密データを解析、干ばつやエルニーニョ現象などに対応して、特定のくちばしの形や大きさを持ったフィンチが生き延びることを突き止めた。ダーウィンが唱えた自然淘汰(とうた)による進化をリアルタイムに、目に見える形で初めて証明した。また、06年には人口の多い地域で人間が出す生ごみを食べるフィンチが増え、くちばしの形が変化し始めたことを報告した。

     ◇

--人間による環境変化が自然淘汰を起こすこともありますか。

R もちろんです。農薬の過剰使用で薬に抵抗力のある虫が生まれているのが一例です。行き過ぎた環境変化は人間にも大きな影響を及ぼします。例えば、チリのイースター島は現在ほとんど森がありません。人間が持ち込んだラットが植物を食べ尽くし、生態系を破壊したことが一因です。人間も生きていけなくなり、島の社会は崩壊しました。地球のサイズは限られています。過剰な変化に対し人間だけ例外とはいかない。環境とそこにすむ生物を保全することは、人間の果たす責任です。

--来年10月、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が名古屋市で開かれます。生物多様性の大切さをどう社会に伝えますか。

P 都会に住んでいる人は自然環境の悪化を目の当たりにする機会がほとんどありません。例えば、昨日、庭にこの草はあり、先週もあった。だから自分が生まれた時もあったと思いがちです。変化はとてもゆっくりで認識しにくい。しかし、少しずつ環境は変化しています。イースター島のように、取り返しのつかない変化が身の回りに起きていることを理解してほしい。人類史上、今ほど行動せねばならない時はないのです。

 ◇「ほぼ絶滅」25年で9種--ガラパゴス諸島

南米エクアドル沖の太平洋に浮かぶガラパゴス諸島は、海底から噴き出したマグマで形成された。一度も大陸とつながらず、生物は独自の進化を果たした。爬虫(はちゅう)類や陸鳥の9割、海鳥の6割、原生植物の4割、魚類の2割が固有種とのデータがある。78年、初の世界自然遺産に登録された。

チャールズ・ダーウィン(1809~82年)は、1835年9~10月の約5週間、諸島に滞在。生息場所ごとに姿が少しずつ違うガラパゴスゾウガメやダーウィンフィンチを見て、「生物の種は不変」という常識を覆す、進化論の着想を得た。

その自然は人間の移住とともに激変した。最近30年で年間の観光客数は10倍以上に増え、外来生物が固有種を駆逐しつつある。今年12月の報告では、最近25年で生物9種がほぼ絶滅したという。

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■人物略歴

◇ピーター・グラント、ローズマリー・グラント

ともに1936年、英国生まれ。米プリンストン大名誉教授。02年、ロンドン王立協会のダーウィン・メダル、08年、ロンドンリンネ学会のダーウィン・ウォレス・メダルを受賞。

(C) 毎日新聞

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