ガラパゴス諸島の中心地サンタクルス島はかつて、キク科植物で樹木のように大きく育つスカレシアの森が3万~4万㌶ほど広がっていたが、今では約150㌶にまで激減している。移住者の増加に伴う農地開発や、アジア原産のキイチゴなどの外来種が勢力を広げたことなどが原因だ。
藤原さんによると、現在のガラパゴスの植物は原生種約550種類に対し、外来種は900種類を超えている。
「ダーウィン・フィンチ(進化論のヒントになったとされる鳥)は今、人間が持ち込んだキイチゴの実を食べている。ゾウガメの餌も9割が外来種。さらにキイチゴがやぶとなり、ゾウガメが移動のため使っていた道をふさいでしまった」と藤原さん。外来種が原生種を駆逐すれば、動物の餌や行動に変化が生じかねず、藤原さんは貴重な生態系のバランスが崩れることを懸念している。
世界の自然や動物を写真や映像に収めてきた藤原さんが、ガラパゴスに通い始めたのは91年。以来、珍しい動物とともに、観光産業の発達に伴い悪化していく自然環境を撮影し続けてきた。自らがリーダーとなり「ガラパゴスの森再生プロジェクト」を立ち上げたのは2005年。07年5月に最初の植林を実施。翌6月、ガラパゴスは「危機にさらされている世界遺産リスト」に登録された。
植林活動には、現地のチャールズ・ダーウィン研究所や国立公園が協力。スカレシアの苗の購入資金は、藤原さんが理事を務める「ガラパゴス自然保護基金」が集めた寄付で賄われている。日本からの植林ツアーは07年から毎年行われており、これまで約400人が参加。「自分たちが生きる島の未来の問題として取り組んでほしい」(藤原さん)と、昨年から現地の高校生も植林に加わっている。
藤原さんは「森再生には息の長い活動が必要となる。多くの人にガラパゴスの危機を知ってもらいたい。そしていつか、スカレシアの森をゾウガメがのしのし歩く、本来の島の姿を取り戻したい」と話す。
(政治経済部・安藤伸一)
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