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チリのアタカマ砂漠はエルニーニョが来ると花が咲く。それも2002年の春に始まった今期のエルニーニョ現象はこれほど世界全域にわたって異常気象が出そろったことは珍しいといわれるほど活発だった。おかげで昨年も5年振りに花が咲き、各地から観光客が殺到して北部の地域社会を潤わせた。 |
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アンデスの裾野に広がるパタ・デ・グアナコの群生地。パタ・デ・グアナコ(グアナコの足) はスベリヒユ科の植物で75種あり、南米西部とオーストラリアに分布する。
チリには54種。紫がかったピンクの花弁5枚で花径1.5〜2cmの花をつけ、平原では草丈1.5〜3cmで広い地域に群生する。
学名: Clandrinia longiscapa |
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アメリカ大陸で最も乾燥した地といわれるアタカマ砂漠は太平洋とアンデス山麓の間をチリの北端からラセレナまで南北1000km余に連なる亜熱帯の大砂漠。
そこに冬の7〜8月に雨が降ると地中で休眠していた草花の種や球根が一斉に芽を吹き開花する。
砂の荒野はみるみる緑野に変容し、赤、青、白、黄、紫など多彩な花々が色彩豊かに野を飾る。「デシエルト・フロリド(花咲く砂漠)」と呼ばれる奇現象だ。
植物の成長に伴い卵やさなぎの状態で生き延びていたチョウやハチなど昆虫類も目覚めて活動し始め、それにつられて鳥や小動物も集まり、一帯に特異な生態系が形成される。
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コルニジャ・デ・フレイレが咲く野に集まっ た花見客。コルニジャ・デ・フレイレ(修道士の頭冠)はアメリカ大陸の各地に分布するキク科の植物で28種あり、チリに4種。草丈3〜5cmで花径2〜2.5cmの花が咲く。
学名: Encelia canescens |
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チリの北部は太平洋上に発達した高気圧が滞留するため雨が降らず砂漠になる。それがエルニーニョが発生で高気圧が弱体化して南の前線が張り出し、北部と中部に雨を降らす。
1840年に初めて科学者の目でデシエルト・フロリドを観測したフランス人の自然学者クラウディオ・ガイは花が咲くまで9年待たねばならなかったというが、以前は10年前後の周期で起きる文字通り奇現象だったのだ。
それが近年、エルニーニョの発生頻度が高まり、デシエルトフロリドも4〜5年ごとに起きるようになった。この20年間では1983年、87年、91年、97年と2002年に咲いている。
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水滴したたるマルビジャ。花はつぼみ状に閉まっているが、日が差せば30分ほどで素早く花開く。夕方、日が落ちて気温が下がると再び花弁が閉じる。 |
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霧雨の水滴がついたテルシオぺロ。晩秋の4月末から初春の9月初めまで毎日「カマンチャカ」と呼ばれる朝露が立ち、時には霧雨となって草花に湿りを与えてくれる。 |
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あでやかな花を広げたリリオ・デル・カンポ(野のアヤメ)。南米産の花で日本の園芸愛好家にも人気が高いアルストロメリア。チリ、ペルー、ブラジルアルゼンチンなど南米各地に分布。52種。31種。チリ31種。
草丈60〜80cmで花径が咲く。スポットと呼ばれる斑 点や縞模様が特徴。
学名: Alstromeria magnifica |
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淡い赤紫色に煙るマルビジャの花畑。マルビジャ(ゼイアオイモドキ)はチリとペルーの乾燥地に生えるゼニアオイ科の植物。約50種。花丈30〜60cmで花は5弁で2cmほど。
学名: Cristaria patens |
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下向きに咲いたオルティガ・カバジュナ(アザミモドキ)。中南米各地に分布。80種。チリ44種。草丈1mで花径1〜2cmの黄色い花をつける。花弁が上に巻き上がり、おしべやめしべが下向きにたれる。
学名: Loasa tricolor |
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飛蝶をかたどったマリポサ・ブランカ(白い蝶)。チリ特産でナス科の植物。12種。草丈20〜50cmに成長し、花径3.5〜4cmの飛ぶ蝶の姿を思わす真っ白な花が咲く。
学名: Schizanthus candidus |
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黄色いコルニジャ・デ・フレイレや赤いアニャニュカや空色の
ススピロが咲き競う絢爛五彩の花畑 |
(ブエノスアイレス 藤井 正夫) |
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